機体考察:エセクエンス

 独立都市国家アクアパレスが運用する急襲戦用小型ゾイド、エセクエンスの考察を開始します。
 ん〜、なんか見覚えのない呼称が聞こえた気がする……。
 聞き間違えじゃ無いわね。
 ――何? 急襲戦って?
 的確に述べるなら「格闘戦用特殊機動小型ゾイド」というのが正しいと思うのですが……。
 長かったので、フィーエルと相談して的確な新語を捏造しました。
 ――ま、その意味は追々判るんでしょ?
 はい。
 んじゃ、いいわ。
 いいんだ……。
 しっかし――。
 ガンスナイパーと比較して、僅か4tの増加で110km/hの増速……凄まじいわね。
 パッと見た感じだと、ミサイルポッドや胴体の副砲等の装備が変わってるのが一目瞭然だけど……。
 それらの装備変更による重量変化はプラスマイナス零、もしくは微増の設定通りと発言したい所ですが――。
 背部推進器の燃料系や脚部の補助安定装置と思しき構造体、基本的に大重量となりやすい格闘兵装を更新・換装している事から、重量の増加は予測値を上回る可能性があります。
 つまり、装甲材等を削っている可能性もある訳ね。
 それ以外にも、機動・運動性能を向上させる場合、フレームの強化を行わなければ空中(地上)分解の可能性も発生する為、重量の増加予測値は更に上昇します。
 ――つまり、装甲材を更に削っている可能性がある訳ね。
 ……まぁ、小型ゾイドは消耗品と考える事も出来ますし、高速ゾイドは「当たったらお終い」を地で行きますので装甲を薄くしまくったり、フレームと一体化させた上で材質をアルミ合金(※)とかにしても問題にはなりませんよ。
(※)の補足〜。
 現実にもある軽量装甲だけど、HEAT系ガン通しだったり劣化しやすかったりと装甲板が使いたくない装甲材ナンバーワンな品だよ〜。
 いや、流石にそれは言い過ぎだって。
 ……冗談ですよ。
 ――多分、エルワチウム合金の単層系でしょうね。
 開発国はヘリック共和国と同盟関係の上、原産地が比較的近いですし。
 ……そして、そこまでして先鋭化した機動・運動性能と瞬発力は凄まじいの一言です。
 ま、カタログスペックには記載がないけれど……多分、適度に発展した市街地での攻防戦で鬼のような戦闘能力を発揮するタイプね。
 ……? 高速ゾイドに分類されそうな最高速度だけど、障害物一杯の場所が得意なの?
 んー、その言葉にはありがちな勘違いが入っているんだけど――。
 まずは、その絶大な優位性になっている機体特性かな?
 ――フィーエル。
 軽量・高機動+大出力スラスターの組み合わせを実現させた場合、上昇性能は驚異的なレベルとなります。
 そして、そのような機体を高層ビル等が配された市街に投入した場合、通常の陸戦ゾイドが踏破不可能なビルですら一瞬で駆け上がり、交戦対象が想定しないエリアより急襲が可能であり――。
 交戦対象が状況を認識するよりも迅速に格闘戦へと移行した後、素早く遮蔽物の反対側(もしくは高所)へ離脱するという理想的な一撃離脱戦術が取れる事になります。
 その状況下を思考した上で、同機が搭載している格闘兵装は当時の新鋭普及型とほぼ同等となっており――その近接攻撃力は小型ゾイドの域を遥かに越え、大型ゾイドにも通用するレベルになっていると推察できます。
 ……ゾイドの位置を探れない人間――つまりは私の様な一般人(奇襲を受けるしかない)側からしたら、例えデスザウラーに乗っていてもそんな街には入りたくありませんね。
 尚、ライガーゼロ系でも同様の機動が実現可能となっていますが、同機は大型ゾイドであるが故に市街地では挙動の自由度に問題を抱えており、行動範囲に問題があると思考できます。
 ――なるほど。それで急襲機、か。
 ……?
 これって市街地戦での格闘攻撃のやりかたの1つじゃないの?
 さっき言った勘違いを正すとそうなるのよ。
 ――フィーエル、そっちのも。
 まず、前提条件となりますが――最高速度が高い機体の全てが高速ゾイドとして認識される訳ではありません。
 行軍速度……類語だと巡航速度でしょうか――そういった数値も含めた「速さ」によって高速ゾイドであるのか、そうでないのかが決まる訳です。
 ま、どこまで参考にしているかは判らないけれど――ベースが200km/h(たぶん、ブースター点火中だから、通常時はもっと遅い)のガンスナイパーだからね。
 参考元の中では最上位機体であるフルグリエンスも、最高速度こそ275km/hとなっていますが――脚部のみでの速力は大きく劣ると推察されます。
 ん〜。
 でも、同じような体付きだけど、足で速度を出すしかない上に機体特性も似ているレブラプターも、コマンドウルフと同じ210km/hなんだけどなぁ……。
 ……まぁ、言った者勝ちという面もあります。
 しかし、たとえ脚部だけでカタログスペックを発揮し、ブースター点火時の最高速度が非公開とされていた場合であったとしても、素体が爬虫類(恒温爬虫類とさせる恐竜も、高レベルの恒温性は持っていない可能性あり)であれば持久力に欠けると推察できます。
 それらの状況から集約して推察した場合、瞬発力にこそ優れていますが巡高速度性能はあまり高くなく、平原や荒れ地など、常時走行してなければならない戦場は苦手だと推察しました。
 ま、苦手つーても高速ゾイドとして考えた場合であって、考察対象事態がその地形で動けない訳じゃないけどね。
 また、レブラプターやスナイプマスターと同様に、強力な射撃戦用機と協同すれば主力量産ゾイドとして、超大型ゾイドに追従すればその護衛として動けない事もありませんが……。
 市街地戦の白い悪魔になれるようなゾイドを、そんな戦場に向けるのは少し勿体ないわね。
 機動・運動性能の高いゾイドは、使うのが色々大変だもんね〜。
 ……んで、能力予測を実例混じりに挙げると――。
 特性に問題のあるレブラプターやBLOXゾイド相手には完全上位な性能だから、設定文面通に無双が可能。
 だけど、同じ小型ゾイドとして考えた場合、火力と射程で勝るガンスナイパーに視界の通る平地や荒れ地で当たるとキッツイ事になるわね。
 逆にガンスナイパーで上記のような市街地無双をしろと言うのは土台無理な話である為、どちらが優れているとは一概には言えません。
 ガンスナイパーの簡易量産型であるスナイプマスターの発展型と言えなくもないけれど……高機動系は運用コスト、パイロット技量、連続稼働時間といろいろ問題が――って、これはさっきプリゼアが言ったか。。
 主力ゾイドとしての運用には射程的な観点から問題がありそうですが、少数運用であれば迅速な攻撃・離脱が可能となりますので……化けますね。
 戦域全体を見通せる小説の主人公のような指揮官と高い錬度のゾイドコアかパイロット達の組み合わせが必要になるけどね〜。
 特殊戦用の、全く新しいジャンルのゾイドであると思考するのが良いかもしれませんね。



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