機体考察:ヴェルブラッディ

 ネオゼネバス帝国製の汎用高性能ゾイド、ヴェルブラッディの考察を開始します。
 遂に、本格的なネオゼネバス帝国軍のゾイドが入って来たねー。
 はい。
 B-Croc社はどちらかと言うとネオゼネバス帝国系の外部企業体でしたが、此方のメーカーは軍と繋がりの深い組織のようです。
 そういった経緯から、色々手に入れる事が出来ました。
 ――?
 何の話?
 本国経由でネオゼネバス帝国に資料を請求してみました。
 ……とは言え、どうやら少々曰く付きの計画だったようで、詳しい資料は頂けませんでしたが……。
 それでも無いよりは遥かに捗るでしょうか。
 流石は同盟国ねー。
 ――で、判った事は?
 大陸間戦争後期――建国間もない頃に発案された『ネオプラン』なる開発計画の末裔に当たるゾイドという事です。
 この計画は幾つかの目的を統合・調整した計画の様でして、その一つは新世代機の技術試験機――。
 要は第5世代機を作る事を目指しており、第5世代機という指標が出来る前に初期型の実機が完成していました。
 流石は技術大国であるネオゼネバス帝国、と言った所ですね。
 ……?
 と、言う事は、考察対象の御先祖さんは惑星Zi初の第5世代機なの?
 いえ、あくまでも実験機である上に問題も多く、量産がされませんでしたので『惑星Zi初の――』という称号はエナジーライガーかセイスモサウルスの物ですね。
 話を戻しますが、同計画のもう一つの目的――。
 これが訳ありの様で、真・オーガノイドシステム(OS)に関連する重OSの搭載・開発試験機らしいです。
 未改修の重OSつーと、普通のパイロットにはえげつない負担を掛ける奴だよね?
 はい。
 ……しかも、この計画に置いてはOSの負担を軽減する方法を模索するのではなく、大出力・重負荷化したOSの負担に耐えられるパイロットを用意する方式を取っており――。
 資料が断片的なのは、この辺りに色々問題があったからみたいですね。
 ――つまり、人体実験とか表に出ると拙そうな事をしていた、と。
 …………。
 ソレ自体は“どこでもやっています”ので、深くは突っ込みませんが――まぁ、よくある事です。
 考察に戻りますが、『ネオプラン』の系列機はバーサークフューラー、シュツルムフューラーのコンセプトを発展させたゾイドのようでして、考察対象にも特徴が見て取れます。
 強力な素体機体に、優れた装備を施す事で最良のゾイドとする。
 どんなゾイドにも言える事だけど、名前の挙がった2機種は特にその思想を特に突き詰めた良い機体だからねー。
 はい。
 そして、その思想を体現したとも言えるのが、武装は主兵装である『グラディウスU』と補助牽制兵装と思われる『対ゾイド電磁砲』です。
 武装の数、凄く少なくて済んでるものねー。
 ……主兵装は複合兵装故に扱いが少々難しいですが、重量の低減等によって運動性能と戦闘速度の向上に役立っているのは確かですね。
 ん? 格闘兵器としてはかなり扱い易いんじゃないの?
 大型だけど、この配置と形状ならただぶん回すだけで良さそうだし。
 そうなのですが、その兵装を格闘兵装と割り切ってしまうと、射撃用の武装が無くなってしまいますので……。
 あ、そっか。
 燃料式のスラスターっぽいから、エナジーライガーのように一撃離脱をし続けるの厳しい……。
 手数が無いとすぐに戦線離脱する羽目になっちゃうか。
 はい。
 燃料式は『安価に』『安全に』そして『ゾイドコアに優しく』高い加速力を得られる上、『ネオプラン』の系列機の特徴と思われますので、データを転用する都合上仕方が無かったとも言えますが――。
 推進剤を消費する以上、全力稼動時間に乏しいという問題点があります。
 素体であるバーサークフューラーが有するマグネッサー系の推進機構と併せれば、全力稼動時間を延長させる事も可能であり、後期型バーサークフューラーの特徴も重ねれば機動・運動性能は充分だと考えられますが――。
 一撃離脱戦法のみでの運用は、いささか厳しいと考えられます。
 後期型の特徴?
 ――引き継ぎます。
 初期型のバーサークフューラーは重厚な装甲と低い重心による安定性を有しつつも、スラスターの推力によって高い機動性とを併せ持たせたゾイドでありましたが――。
 後期型はフレームの自由度を高く構築する事で、安定性をわざと崩す事が可能となっております。
 その上で、考察対象は重心を高いままで固定する事で安定性を低下させ、挙動性能を向上。
 俊敏性を向上しようという意図を予測出来ます。
 他のゾイドの高火力化に対応し、機動・装甲の両立から回避重視に舵を切った――と、言う事なのでしょうか。
 これは今までの『ネオプラン』とは異なる、野心的な試みですね。
 なるほどねー。
 あ、そうだ。
 「ねおぷらん」のゾイドのOSはとても危ないのを積んでるってさっき言ってたけれど、この子にも“危ないもの”は積まれてるの?
 いえ、流石に一般パイロットにも送られているらしいので、そういう危ない機構は詰んでいないかと。
 付け加えますと、『ネオプラン』で運用されていた真OSと名称が異なりますので、OSの仕様変更を行った可能性もあります。
 しっかし、中身の改造具合を聞くと、特装機というよりも特機に思えてくるんだけど……こんなの量産して大丈夫なの?
 バーサークフューラーの部品が流用可能な別のゾイド……と思った方が正確なのは確かですね。
 度々述べている様に、運用する機種が少なければ少ない程運用コストは良くなりますので用途が重複する機種はなるべく統合した方が良いのですが――。
 第5世代機等の特殊用途のゾイドだけは、余計なコストが掛かりますが別の機種があった方が“もしも”の時に役に立ちます。
 地球の兵器に例に挙げますと、航空機が合致するのですが――。
 要約すれば、訓練中の事故となります。
 通常の陸戦兵器であれば本来問題になりませんが、超高機動戦闘を行う第5世代機の場合には空中分解――いえ、正確に言えば地上分解でしょうか――が起こる可能性があります。 
 戦争中などの非常事態であれば、容赦無く出すけれど……。
 高いお金を掛けて作った機体を、訓練等の事故で失いたくは無いからねー。
 ですので、そういった事故が起こった場合には原因究明が終わるまで該当機種は緊急対応(アラート)に出られなくなってしまいます。
 その穴を埋める為、別の機体を用意して置くのが定石であり――。  
 いざとなれば、多大なコストを導入する事で既存の量産機体を比較的短時間で第5世代機へと更新できる考察対象は、その高い性能だけでなく、突発的な事態にも対応できる優秀な機体と言えます。
 ――とは言え、通常時は少数配備の珍しいゾイドだと予測できますが。



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