機体考察:バーバリコング

 B−Croc製のゴリラ型中型ゾイド、バーバリコングの考察を開始します。
 型がゴリラ型なのも珍しいけれど、こんなに多機能なのも珍しいよねー。
 高性能な陸戦中型ゾイドでありながら水の中にも適性があって、ついでに光学迷彩も張れる。
 ……凄いわね。
 ――まぁ、類人猿系だから私は乗れないけれど。
 ん? なんで?
 ZA能力者は乗機から離れる時、操っている機体と自分の身体との差異を強く思う事で戻ってくるからね。
 人間に近い類人猿だと、差異が少ないから「戻って来れない」なんて言う事故が起こるのよ。
 ゼフィリア、プリゼア。
 ――話が逸れています。
 わぉ……。
 そんじゃフィーエル、続きをお願い。
 了解しました、ゼフィリア。
 考察対象は第4世代機を謳っている事からも判る通り、その機体性能は従来の中型ゾイドを大きく凌駕しており、旧型の大型ゾイドにも比肩する程の能力を有していると考えられます。
 そして、先程ゼフィリアが述べた通り、多種多様な補助機能も保有しており様々な状況下での戦闘が可能となっております。
 なお、素体の兵装の過半が腕部に集中配置されている点は、他の部位の重装甲化と耐久強度の向上に大きく貢献しておりますが、素早く可動させる必要がある部位への加重集中は運動性の低下を招いていると推察できます。
 ですが、大型のエネルギー兵装すら扱える強力なコアジェネレーターを備えている事から、その余剰電力を用いた機体出力と搭載された格闘兵装による近接攻撃力は高い攻撃能力を有しており、振りの遅さを覆して余りある近接戦闘能力を有していると考えられます。
 ……すごいねー。
 ん〜。
 凄いには凄いけど、凄すぎじゃない?
 いえ、確かにインパクトはありますが、エナジーライガーが量産されている頃時代であれば十分製造・量産が可能なレベルです。
 ……まぁ、生産・整備コストがトンデモナイ事になっているだろうという事と、大出力化してしまったコアジェネレーターが発する熱量が凄い事になっている為、戦闘後に隠れるのはとても難しい事が弱点といえば弱点になりますが――。
 敢えて他の問題点を追及するとすれば、補助機能として挙げられている潜水能力でしょうか。
 ん?
 どゆこと?
 先に結論を述べてしまうと、陸戦を重視するなら潜れて攻撃できるというだけで本格的な戦闘は止めた方が良く、水中戦を重視しているなら積極的な陸上戦闘はしない方が良い。
 ……と、いう事です。
 ――その心は?
 装甲。
 ……詳しく話せば、その種類でしょうか。
 陸上においてはAPFSDS(徹甲弾)やHEAT(形成炸薬弾)、レーザー・ビーム(熱エネルギー兵器)等、多種多様な攻撃手段に対抗する必要があり、それぞれの弾種に対応した装甲を重ね合わせる事で防御力を確保しています。
 それに対して水中は水の衝撃(=爆雷系の至近弾)ですら致命傷になるというオーバーキルゾーンですが、それよりなにより耐圧構造としなければ水中用ゾイドとして運用できる深度にまで潜れないという大前提があります。
 この耐圧構造(耐圧殻)が曲者でして、ある程度以上の深度に潜ろうとすると全身隈無くその水圧に耐えられるだけの装甲が必要になり、尚且つ浮く時は浮かないといけないのであまり重くは出来ません。
 この前提と頭部以外の外観形状から、考察対象は恐らく前者を採用していると考えられ、潜水機能は低深度に限定した潜入の為の補助として使用していると考えられます。
 ……まぁ、それ(=無改造で水に潜れる)が出来るだけでも結構脅威なのですが。
 なんとなーくその怖さは判ったような気がするけど……。
 フィーエル、なんか例を挙げて。
 了解しました、ゼフィリア。
 沿岸部の基地攻撃を想定し、考察対象を導入します。
 まず、静粛性を向上させたホエールキング系で目標近くの浅瀬まで侵入後、考察対象を水中でリリース。
 そのまま襲撃(夜襲を推奨)を実施し、目的達成後速やかに海中に没して離脱する。
 ZA能力者の様な「ゾイドを探知する」という能力が防衛側に無い場合、その奇襲に対抗する為には莫大なコスト(多種多様な機種・人員が必要となる対潜哨戒網)が必要となり、考察対象が敵勢力に与える圧力は小さくない物となると推察します。 
 ありがと。
 ――ちなみに、さっきの装甲の話がもしも逆なら?
 軽量な耐圧構造を構築する為に、単一素材で構築された装甲で機体を構成する事になりますが――。
 単一素材による装甲では歩兵が持てる無反動砲(現時点で存在する対戦車兵器ですら70cmの鉄板をぶち抜ける)で撃破されてしまう可能性が出てきます。
 そんなゾイドを対ゾイド戦に投入するのは……あまり想像したくないですね。
 まぁ、記載されたカタログスペックを鑑みるに、前者の陸上運用重視が考察対象の正しい運用方式と思われますので、後者の様な事にはならないと思いますが。
 はーい、追加で質問でーす。
 なんでしょうか、プリゼア。
 ジェネレーター出力が高過ぎて戦闘後に排熱でバレちゃう、って事だったけど……どうしてそんな大出力のジェンレーターを積んでるの?
 どうしてって……。
 機体性能向上の為には、搭載可能な限りの大出力ジェネレーター積むのが普通でしょ?
 ……相変わらず、ゾイド戦では力押ししか考えてないのですね。
 …………はい?
 プリゼアが言いたいのは、肩のオプション大型砲を実弾にするか、もしくは装備できないようにし――。
 その上で腕部兵装に掛かる分のエネルギーをEパック方式等にする事でジェネレーターを低出力化すれば、戦闘中でも低排熱のまま運用できる常時隠蔽型の奇襲ゾイドが出来るのに……という事でしょう?
 うん、難しく言うとそんな感じ。
 ……?
 火力や機動力を下げてまでそんな事をするの?
 ゾイドなら何処に居ようと必ず見つけられる貴女には判らない事ですが、普通の場合では「見つからない」もしくは「見つけ難い」という事は凄いアドバンテージである、という事ですよ。
 ……まぁ、だからと言ってゼフィリアのいう事も完全に的外れという事ではありませんが。
 ………ラフィ〜、悪い癖が出てるよー。
 結論〜。私は結論を求めてるよー。
 ……確かに、プリゼアが言った案を実行に移せば、考察対象は「最強の奇襲・破壊工作ゾイド」という名称を得る事ができます。
 しかし、かなり上の方でも述べた通り、高性能でありながら多機能でもある考察対象には莫大な運用・製造コストが掛かっていると考えられ、そんな専門職のゾイドばかりにお金を掛け、機甲部隊などの正面戦闘用のゾイドを疎かにすればどうやっても戦争には勝てません。
 なので、機体のフレームが許す限りの攻撃性能を追加付加する事により、正面戦闘用のゾイドとしても運用できるようにした事で、機甲部隊等の主力ゾイドと併用出来る機体とした――という事なのでしょう。
 んーと……つまり、間を取って両方ともに妥協した?
 まぁ、専門職化させたのを各種揃えるのが一番強いのは確かですが、お金には勝てないという事ですね。
(全ての軍隊の最大の敵は、身内の金庫番であるのが常ですし)
 ――ですが、用途を絞らなかった事によってラインを長く維持出来たと予想出来る事から、様々な発展が見込める事も記載する必要があります。
 ……どゆこと?
 量産効果によって生産費用が下がれば、派生機の製造が考慮される様になり――。
 「水中適正(気密性)を犠牲にする事で冷却性能を高め、更に大出力のジェネレーターを積む事によって更なる機能向上を目指したタイプ」
 「同じく水中適正を犠牲にする事で生産費用を更に削った量産タイプ」
 「中身のフレームのみを転用し、装甲材を耐圧構造に特化した素材とした水中作業(※)タイプ」
(※)の補足ー。
 水中戦闘において、ウオディック等水中生活に特化した機種の戦闘能力は圧倒的であり、特化仕様とした事で深度を稼げても元が汎用系では対等な戦闘は不可能であると考えられるよー。
 あ、一応優位点も注釈するけど、水中で自由に手が使えるという事は凄い優位性だから、大型艦の水中船外作業とかで使う為に、多分いろんな国で引っ張り蛸。
 ひぇ!? 補足に入って来た〜。 
 ――と、言った様々な事案が発生する事が予想されます。
 素が優秀な機体だからこそ出来る芸当ですね。



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