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ラフィーアの機体考察:   

 ガイロス帝国が開発した不遇の傑作機、バニッシュラプターの考察に入ります。
 コンバットシステム周りの惰弱性(その高過ぎる汎用性故に鹵獲された際に発揮されるプロテクトが甘い。その他、憶測色々あり) によって本格的な量産化が見送られた機体ですな。
 取り立てて目新しい技術は無いものの、ZAC2105年代にこれほど機体を作り上げた事は正直驚嘆ものです。
 独立戦争前にキチンと量産が成されていれば、ソレこそ世界の趨勢を大きく変動させたでしょうに。
 ふふふ……ソレが足の引っ張り合いでオジャンになって、 今では滅多に見かけないレア物機体……愚かな選択をしたものです。
 な、なんか怖いぐらい楽しそうですが……考察を続けません、ラフィーアさん?
 ええ……続けますよ、続けますとも。
 ふふっ……素晴らしい機体の考察は楽しいですものね。
 …………。
 (量産されなかったのが嬉しいのは判るが、ちと怖いのぅ……)
 ――先にも述べた通り、考察対象は当時の新鋭技術の粋を集めてはいますが、無理のない堅実な構築をしており…… その性能の高さもあって、ウェシナがゼニス・ラプターを開発する際に死力を尽くして資料を集め、参考にした程の機体です。
 参考としたゼニス・ラプターがそうであるように、 原型となった考察対象も背負子を変更する事で多種多様な状況に対応する事が可能となっており―― 今現在では特殊仕様である(スナイパー仕様)と恐らく通常仕様と思われる(アサルト仕様)が確認されております。
 スナイパー仕様はその名の通り、狙撃戦用と謳っているだけあって隠蔽用の電子欺瞞兵装が充実しているのもそうですが―― 特筆すべきはやはりその長大な狙撃砲サンダーボルトです。
 上記兵装は、ネオゼネバス帝国のセイスモ砲の登場によって直接打ち込むタイプの長距離実弾兵装が下火になった事も重なり、 ZAC2105年からその中頃までの間、最強の貫徹系の砲であった事に間違いが無く―― 後記の状況を作り出した立役者であり、考察対象の脅威レベルを2段階ぐらい上に引き上げた最悪の兵装です。
 ――――。
(うわぁ、本音が出てるぅ……最後の方、本音が出ちゃってますよぉ、ラフィーアさん)
 次にアサルト仕様――強襲型と銘打っていますが、標準的な装備で取り纏められた本兵装こそが通常仕様であると考えられ、 小口径主体とはいえにその搭載数に裏打ちされた継戦可能時間と手数の多さにより、非常に高い直接戦闘能力を有しています。
 ちなみに本仕様が装備可能なロケットブースターは、 惑星Ziに本格的なオーバードブーストが提唱される前に構築された陸戦系機体を滑空・飛翔させるユニットであり、 後の高速強襲機に大きな影響を与えたのは疑い様がありません。
 ……まぁ、近代の実情を見るに、流石に使い捨ては勿体無いという風潮になったみたいですが。
 これらの攻撃的な外装を有しつつも、素体は隠密性をも考慮した―― 当時ではまだ卑怯とさえ言われていた光学迷彩・電子欺瞞兵装を複合的に実装しており、 それに加えて高い俊敏性、過不足の無い機動性と装甲すら併せ持つ考察対象は、ZAC2105年製の機体でありながら、 恐らく惑星Zi初の第4.5世代機(※)として認識されています。
(※:この場においては、エナジーライガーのような特異な特性を持たずに、堅実な形で従来機を駆逐できる機体を指します)
 経歴だけを列挙すると、まさしくドレットノート級だな……。
 しっかし、10年以上も後発のゼニス・ラプターがコレに勝てないのはなんでだ?
 ――――。
 ……まぁ、いいでしょう。
 成功率の低い格闘戦や補強されたレールガンの威力を侮っていたのも有りますが―― ゼニス系は“自分より弱い、大多数の敵機と同時に戦う事”を前提に構築されていますから、 自分が纏っている装甲を突破出来るような敵との交戦は想定外なのです。
 ついでに言っておきますが、考察対象にジェノザウラー20体を真正面から迎撃しろとかは多分不可能ですし…… 回避を前提にしている事から操作難度が高く、新兵同士が乗った状態であれば、 1対1でもゼニス・ラプターの方が優位に立てる筈です。
 ――際で。
 しかし、UD前でもゴジュラスギガと同等以上の防御力を持つゼニス・ラプターが一方的に殺られるとなると―― 後記するって言ってたサンダーボルトか?
 ……その通りです。
 アサルト仕様だけであったのならば同じ第4.5世代機同士、 運動性能の考察対象と防御力と火力のゼニス・ラプターと言った互角に持ち込めたのですが……。
 忌々しい事に、 スナイパー仕様のアレはゼニス・ラプターの索敵範囲外からでも古代チタニウム合金複合材の重装甲を抜ける為、 どんな状況であっても考察対象が優位な位置にいる事になります。
 当然、普及型の第5世代機とも言えるエナジーライガー改も余裕で打ち抜ける事から、 第4.5世代機でありながら第5世代機殺しも比較的容易に実行可能であり―― 従来機以上の機動性を獲得している事から、それこそどんな所にでも入り込んで狙撃。
 ……量産されていれば、それこそネオゼネバス帝国を簡単に滅ぼせたでしょうね。
 ――恐っろしい機体だな。
 ええ、本当に。