機体考察:レイジウルフ

 ガイロス帝国製――と言うよりも、殆どが件の『L.C.ファクトリー』製高機動中型ゾイド、レイジウルフの考察を開始します。
 〜〜♪
 ……その感じだと、乗れたみたいですね。
 うん。
 持ち主は私より少しお姉さんな人みたいで、事情を話したら乗せてくれたよー。
 後々も技術屋には成らない貴女に詳しくは聞けませんが……どんな感じでしたか?
 感覚としては、軽めのライガーゼロ……かな?
 同クラスのシャドーフォックスよりも出力や限界反応が凄く高いみたいで乗りやすかったよー(※)。
 (※):レイブンと友達になれるような異じょ――才能ある彼女の感覚です。
 でも、まだ何か隠しているぽっかったけど……それが解る前に降ろされちゃった。
 ――ゼフィリアはどうだったのですか?
 んー。
 プリゼアの言った通り、話せば判るタイプっぽくて色々話したんだけど――。
 話している内に『殴り合い宇宙』(※)になっちゃった。
 ※:江東区の一部地域で使われていたガンダムウォー用語。
 『めぐりあい宇宙』を捩った言葉で、簡単に言えば全力の殴り合い。
 ……なにしに行ったんですか。
 いやー、報道人の大虐殺したのがバレたったと言うか、ゾイドの支配者は世界に2人も要らないと言うか――。
 でも大丈夫、決着は付いてないから。
 とても大丈夫じゃなさそうですが……。 
 そろそろ時間ですので、本題に入ります。
 プリゼアの言葉と開発時代設定通り、考察対象はライガーゼロの開発技術を応用した狼型ゾイドであり、中型機でありながらライガーゼロとほぼ同等のスペックを有する高速ゾイドとなっております。
 まず、装備や外装に関してですが、注目すべき兵装は『デュアルツインライフル』です。
 あ、『Eシールドブレード』じゃないんだ。
 考察対象は搭載する装備の大半がユニークですので、好きな兵装に絞らせて頂きます。
 ……考察に戻りますが――。
 実弾とエネルギー兵器の特性を上手く組み合わせた良い武装ですね。
 実弾は運動エネルギーや化学反応系による装甲破壊力に優れていますが、同じ部位に当てるのが困難であり、一撃で貫通できないと敵方に損害を与えられません。
 そしてエネルギー兵器は 連続的な照射は可能ですが、破壊力を増強すると大型化・高負荷化して運用機体が限られてしまいます。
 そんな状況に対し、本兵装は実弾が装甲にダメージを与えた所にエネルギー兵器を当てて貫通・破壊を目指す兵装のようですね。
 でも、実弾の方の装弾数は少なそうだから、その効果を使えるのは1回の戦闘で3〜5体位だと思うけれど……。
 軽量・小容量で出来る事を考えれば使える武器ね。
 ……それに実弾の方が尽きても牽制兵器として使えば良いか。
 ――ゾイドの方は疲れるだろうけど。
 それなのですが、主兵装と考えられるEシールドブレードもエネルギー兵器である事から、高率の良いコアジェネレーターを積んでいるか、考察対象の分類的にコア出力が高い種族の様で――。
 結構撃ちまくれる可能性があります。
 しかし……ソレ等基本的な装備以外でも中々に面倒な機体です。
 どういう事?
 まずは通常状態ですが……。
 結論から先に言いますと、この形態だけで済むならば攻撃に特化した中型高速ゾイドと言うだけで済みます。
 ――簡単に言えば、シャドーフォックスのステルス分を全部攻撃面に割り振った様な機体と考えて頂ければ簡単かと。
 もちろん後発機ですので、技術革新分の性能も加味されております。
 現在確認出来る全ての中型高速ゾイドを凌駕する機体となりますが、コストや特性を考慮すれば、そこまで脅威はありません。
 そもそも、本来高速ゾイドは『奇襲・特殊工作』に分類される様に真正面から戦闘を行わない機種です。
 そして、その運用方式に最も必要な能力は隠密性であり、高速ゾイドがゾイド対ゾイドに置けるキルレシオが他の機首と比べて優れているのも、難敵を避けつつ目標が満足な対応を取る前に撃破している為です。
 ――しかし、逆を言えば奇襲・急襲の出来ない高速機はその能力を大きく制限されてしまい、主力となる機甲部隊や砲撃部隊に先に発見されてしまえば、目も当てられない状況に陥ってしまいます。
 昔の資料で言うと、ガイロス帝国のエレファンダー(第3世代機)をヘリック共和国のライガーゼロ(第3世代機)がぶん殴ってる写真がよく有るけど、真正面からならライガーゼロの方が劣勢だもんねー。
 故に、考察対象がこのままでいてくれれば、『大した脅威とならず、寧ろシャドーフォックス系の方が怖い』と、なるのですが――。
 考察対象には従来機を大きく逸脱する『優位性』があります。
 んー。
 もしかして、考察対象が隠してそうだった秘密?
 はい。
 ……短時間ではありますが、考察対象にはその性能を増強・拡張する機能が備わっています。
 名称は『レイジシステム』
 発動時の能力は第5世代機に準ずる為、考察対象がロールアウトした頃に戦場を闊歩していた第3世代機では対処できない状態となります。
 ……問題点も多く、起動に至る条件が厳しかったり、発動中は異常発熱が発生する上に発動後に機能低下のリスクもありますが――。
 コマンドウルフ並に収まっている隠密性能の低さを覆して余りある特性ですね。
 でも、そんなんだと能力が終了する前に状況を終了させる……。
 ううん、ソレが切れる前に逃げ遂せてないと、『発動中に所在がバレる→包囲される→地獄行き』で命が無いって事ね。
 そうなります。
 ちなみに、リーダ個体のみの特権との事でしたが――。
 『モニターデータさえきちんと録れておれば、後々他のデバイスでも同じ機能を再現してやる(byスーパーロボット大戦OG)』
 と言うのはどこぞの外道化学者の言葉ですが、ソレが出来てしまうのが現実です。
 フィーエル、出来るの?
 はい。
 難易度は異なりますが、シールドライガーのE・シールドも同じ様な条件でした。
 すぐに、とは行きませんがガイロス帝国でも再現は可能でしょう。
 この素体は考察対象の素体となる種族の中で特に優れた個体だと推察できますが、同じ種族のゾイドを使用して量産すれば、考察対象と比較して平均8割前後の性能を有するゾイド部隊を結成する事が出来ます。
 まぁ、フレーム強度の関係から、その能力発動時には被弾しなくても某マジェ○ティック○リンスの前衛機並みに損傷するでしょうが、人とコア――最悪機体を破棄する事になっても人は生き残れますので、戦力の維持は可能です。
 でも、実際には作られなかったのは……やっぱり『L.C.ファクトリー』が強すぎて量産の許可が下りなかったから?
 いえ、今回のは普通にガイロス帝国上層部の判断ミスのようですね。
 表面上のコスト――余分な機能が付与されている事から少々割高な事を集中的に指摘され、量産計画はポシャった様です。
 上手く活用すれば、準第5世代機が遥かに安価に量産できたと言うのに……間抜けな選択をしたものです。
 ふ〜ん。
 ……でも、もしも量産されて戦場に現れた場合、どうなってたのかな?
 とりあえず、交戦国をヘリック共和国と想定しますが――。
 各部隊にゴジュラスギガ(※)等を護衛に組み込むか、フォロー出来る位置に第5世代機を配置しておくか――でしょうか。
 (※)の補足〜。
 第5世代機よりも世代で劣る第4世代機扱いだけど、その装甲強度・耐久力の高さから、高速戦闘型第5世代機だと撃墜が難しい事から護衛足り得るんだよー。
 まともな対策を取るには十数年待たないといけないのね……。
 ――というか、その時代まで待ったとしても配備数的に無理なんじゃない?
 ええ、無理ですね。
 ……だから恐ろしいのです。



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